【必須ミネラル図鑑】
No.2 リン (P)
〜 生命の設計図を綴り、エネルギーを回す「光の運び手」 〜

<リンの特徴>
リンは、私たちの体内でカルシウムの次に多いミネラルです。その役割は多岐にわたり、まさに「生命のマルチプレイヤー」と呼ぶにふさわしい存在です。

私たちが呼吸をし、筋肉を動かし、思考ができるのは、細胞内で「ATP」という物質が分解される時に放たれるエネルギーのおかげです。このATPの主役こそがリンであり、リンがなければ生命は一秒たりとも活動を維持できません。

生命の設計図であるDNAや、RNAの二重らせん構造において、その「鎖」の部分を構成しているのはリン酸です。つまり、生命の継承そのものを物理的に支えている物質でもあります。

骨や歯の約80%は「リン酸カルシウム」として存在しています。血液中ではカルシウムとリンが「1:1」の比率で保たれるのが理想ですが、現代の加工食品(添加物としてのリン)を摂りすぎると、このバランスが崩れ、逆に骨からカルシウムが溶け出してしまうという繊細な側面も持っています。

エピソード(1)
錬金術からの発見
1669年、ドイツの錬金術師ヘニッヒ・ブランドは、卑金属を金に変える「賢者の石」を作り出そうと没頭していました。彼は「人間の尿には特別な力が宿っている」と信じ、なんと、5,000Lもの尿を煮詰め、蒸留するという凄まじい実験を行いました。
その過程で、金は得られませんでしたが、暗闇で青白く光り、空気に触れると自然発火する不思議な物質を取り出しました。
これが人類が初めて化学的に発見した元素「リン」です。彼はこの物質が放つ冷たい光を見て、ついに賢者の石を見つけたと思い込んだといいます。

エピソード(2)
マッチの革命と「マッチ売りの少女」
リンの「摩擦や熱で燃えやすい」という性質を利用し、19世紀にマッチの製造に利用され始めました。それまで火を起こすのは重労働でしたが、リンのおかげで誰でも手軽に「火」を持ち運べるようになったのです。
しかし、初期の「黄リンマッチ」は毒性が強く、製造工場の労働者が健康を害するなどの悲劇も生みました。現代のマッチの毒性は大変低くなっていますが、アンデルセンの童話『マッチ売りの少女』の背景には、当時のこうしたリンによる技術革新と社会問題の影が潜んでいます。

以上、必須ミネラルのひとつ、リンについてでした。
次回の更新もお楽しみに!

