【必須ミネラル図鑑】No.5 塩素(Cl)

【必須ミネラル図鑑】
No.5 塩素 (Cl)
〜 毒を薬に変える、生命の「最強殺菌」ディフェンダー 〜

必須ミネラル図鑑塩素

<塩素の特徴>

塩素は「毒性の強いガス」というイメージが先行しがちですが、私たちの体内では陰イオンとして、健康維持に欠かせない重要な働きを担っています。塩素の最も有名な役割は、水素と結びついて塩酸、つまり胃酸になることです。胃酸は、食べた肉などのタンパク質をバラバラに分解し、食べ物と一緒に侵入してきた細菌を死滅させる「体内保健所」のような役割を果たしています。

塩素の特徴その1

ナトリウムと共に細胞の外側に存在し、体内の水分量や、血液の酸性・アルカリ性のバランス(pH)を秒単位で微調整しています。私たちが意識せずとも体が一定の状態を保てるのは、塩素が休まず働いているおかげです。

塩素の特徴その2

エピソード(1)
美しき黄緑色
塩素は1774年にスウェーデンのシェーレが発見しましたが、当時は化合物だと思われていました。1810年、名だたるミネラルを次々と発見したハンフリー・デイビーが「これは単独の元素である」と証明し、その美しい黄緑色の外見から、ギリシャ語で「淡緑色(chloros)」にちなんで「Chlorine」と名付けました。日本語の「塩素」は、塩の素という意味で、その性質を鋭く言い当てています。

塩素のエピソードその1

エピソード(2)
毒ガスから食塩への変身
塩素は単体(Cl)の状態では、肺を焼くほどの猛毒ガスです。一方で、ナトリウム(Na)も水に触れると爆発する危険な金属です。しかし、この「猛毒」と「爆発物」が手を取り合うと、生命に不可欠な「食塩(塩化ナトリウム)」へと劇的な変身を遂げます。この化学の不思議は、生命が猛毒を飼い慣らし、自らの糧としてきた進化のドラマを象徴しています。

塩素のエピソードその2

エピソード(3)
人類を感染症から救った手洗い革命
19世紀半ば、ハンガリーの医師ゼンメルヴァイスは、産後の死亡率が高い原因が「医師の汚れた手」にあると気づき、塩素水での手洗いを提唱しました。当時は細菌の存在すら知られていない時代でしたが、塩素の殺菌力が多くの命を救ったのです。これが現代の公衆衛生の原点となり、現在も水道水の消毒やプールの殺菌として、私たちの安全な暮らしを支え続けています。

エピソード(4)
プールの匂いの真実
プールの独特な匂いを「塩素の匂い」と思っている人は多いですが、実は塩素そのものの匂いではありません。水中の塩素が、人の汗や汚れに含まれるアンモニアと反応してできる「クロラミン」という物質の匂いです。つまり、あの匂いが強いほど、塩素が一生懸命「汚れと戦った証拠」なのです。

以上、必須ミネラルのひとつ、塩素についてでした。
次回の更新もお楽しみに!

塩素のエピソードその3.4と必須ミネラル図鑑塩素のまとめ
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