【必須ミネラル図鑑】
No.6 ナトリウム (Ca)
〜 生命のネットワークを繋ぎ、歴史を動かした「白い黄金」 〜

<ナトリウムの特徴>
ナトリウムは、細胞の「外側」にある細胞外液の主成分であり、生命の維持において司令塔のような役割を担っています。

脳が「手を動かせ」と命じる時、その信号は神経細胞を流れる「電気」として伝わります。この電気を生み出しているのがナトリウムです。細胞膜にあるゲートが一瞬開くと、外側にいたナトリウムが細胞内へ一気になだれ込みます。この瞬間に発生する微弱な電気が、私たちの思考や運動の正体なのです。

ナトリウムには水を強く引きつける性質があります。血液中のナトリウム濃度が高くなると、体は濃度を下げようとして水分を溜め込みます。これが「塩分を摂りすぎると血圧が上がる」仕組みであり、同時に「むくみ」の原因でもあります。

細胞外のナトリウムと、細胞内のカリウムは、常にバランスを取り合っています。この絶妙な均衡が保たれることで、心臓の鼓動や筋肉の動きが正常にコントロールされています。

エピソード(1)
ミイラ作りを支えた「聖なる粉」
ナトリウムの語源は、古代エジプトで採掘された天然の炭酸ナトリウムの結晶「ナトロン」に由来します。ナトロンは強力な乾燥剤として、遺体の水分を抜き、腐敗を防ぐためにミイラ作りに欠かせないものでした。死者を永遠の存在に変えるための「聖なる力」が、ナトリウムという名前のルーツに刻まれています。
エピソード(2)
「給料(サラリー)」は塩だった
英語で給料を意味する「Salary」は、ラテン語で「塩(Sal)」に由来します。古代ローマ兵は、塩を買うための手当「サラリウム」を支給されていました。かつて塩は、食品を保存し、生命を維持するための「白い黄金」と呼ばれるほどの貴重品であり、時には金と同じ重さで取引されるほど経済の根幹でもありました。

エピソード(3)
草食動物と人類の「塩の道」
肉を食べる肉食動物は獲物の血液から塩分を摂取できますが、植物を食べる草食動物にとって塩は常に不足しがちなミネラルです。野生動物が命がけで岩塩を舐めに来る「塩場」には、必然的に動物が集まり、そこへ至るまでの「塩の道」ができました。人類もまた、内陸へ移動する際に塩を運ぶ「塩の道」を切り開き、それが交易や都市の発展へと繋がっていったのです。

エピソード(4)
水に入れると爆発する危険な素顔
食塩(塩化ナトリウム)としての安定した姿からは想像もつきませんが、純粋な金属としてのナトリウムは、極めて気性が荒い物質です。空気中の湿気や水に触れただけで激しく火花を散らして爆発します。この「爆発的な反応性」を体内で上手く手懐け、穏やかな電気信号として利用している私たちの生命システムは、まさに驚異的な化学の結晶と言えます。
以上、必須ミネラルのひとつ、ナトリウムについてでした。
次回の更新もお楽しみに!

